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総合的な学習の時間

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総合的な学習の時間

教育改革の3本柱、基礎学力の充実・自立した学習・個性を伸ばす教育を見てみると、それぞれが無関係ではなく、お互いに影響し合っていることがわかる。この教育理念をどのようにして実現していくか、これから説明する。  

基礎学力の充実については従来の授業形態でも対応できる範囲だとは思うが、自立した学習と個性を伸ばす教育については対応できない。実現するためには、新学習指導要領で導入される総合的な学習の時間を有効に活用することである。  

これから説明する総合的な学習の時間は、新要領とは異なり、もっと汎用性を高くし教育時間を多くとる。そのためには従来の一斉授業を減らすことになる。  

画一的な受け身の教育を必要最小限に削減する。授業内容を吟味して基礎の部分だけをみんなで勉強し、応用の部分は各自でやるようにすることで実現できる。基礎を反復学習することで理解力が増し授業時間が短縮できることは、百ます計算表で有名な兵庫県朝来町立山口小学校の試みでもわかる。一斉授業の質を高くすることで時間自体を減らし、ほかの学習に割り当てることができるのである。  

小学校低学年のころは受け身の授業が主体になるのは仕方ないが、高学年や中学にもなれば自ら勉強する形態を軸にすることは容易だと考える。自分のペースで勉強を進め、わからないことがあれば先生や生徒に聞く。少人数授業にしても味わえない一人ひとりの理解度に合わせたきめ細かい教育をすることができる。  

総合的な学習の時間で実際に行う教育内容は、次の四つに分けられる。  

一つ目は、学校の勉強を自分でやる「自習の時間」である。この教育の目的は、個人の理解度にあった学習を行い、知識を最大限に身に付けさせることである。一斉授業でやらなかった応用分野を一人で勉強させるのだ。反復学習をこの時間にできれば、授業自体もスリム化でき効果的である。予習・復習を習慣化できると、学習の理解度も増す。わからないところがあればすぐに個別に先生から教えてもらえる。生徒同士で教え合うことができるのが理想である。  

二つ目は、自分で学習するテーマを決めて、自分で勉強する「個別学習の時間」である。最初のうちはグループで学習の流れをつかませて、慣れてくれば一人ひとり別々のテーマにする。またみんなで同じテーマにし、個別に学習させる。各が出した結果についてみんなで議論する。そうすると生徒たちがいろいろな考えを持っていることがわかり、一人で調べてわからなかったことが見つけられる効果がある。興味のあることを自分で調べ、みんなに発表できる技術を取得させるのがこの教育の目的である。  

三つ目は、グループで一つのテーマについて考える「集団学習の時間」である。一人では扱いづらい大きなテーマに数人のチームをつくって学習するのである。グループ内で役割を決め、みんなの意見を総合して結論に至る。学校の意義はただ勉強を教えるだけではなく、集団生活から協調性を養うことだ。異なる意見をグループで一つにまとめる力、自分の主張をうまく伝える能力を育てるのが目的だ。  

四つ目は、子供たちに様々な経験をさせる「体験学習の時間」である。今までの教育ではなかった社会とのつながり、自分と人とのつながり、社会と学校教育との関連を考えるのが目的である。社会と接して初めて学問の重要性がわかり、実際に体験することで職業のおもしろさが実感できる。社会と学校との温度差を縮めることができ、自分の進路を考える機会になるだろう。奉仕活動のような社会に出ると体験しにくい経験も積ませるべきである。

地域教育

地域と子供との関わりが、少子化や都市化の影響で薄れてきている。子供の教育が学校中心に行われて地域の役割がなくなってきている。子供の教育について家庭・学校・地域のそれぞれで得意な分野が存在するので、肥大化した学校教育の役割を分担する必要がある。  

学校運営に地域の人々の意見を取り入れる「学校評議員制度」というのがある。教育ジャーナルの調べで、導入している学校は、小学校で16%、中学校30%、検討中がそれぞれ30%という結果である。  

まだ始まったばかりの制度であるが、地域に開かれた学校を築いていくには有効だといえる。また学校の様子をホームページなどで公開し、あらゆる人々に意見を求めることもできる。より良い学校教育を行うのに、第三者の目は重要なことだろう。  

子供たちと地域の人々が直接交流する機会を得るのに都合のよいのが、総合的な学習の時間である。  

一つの方法として、地域の人々の経験を生かした授業を行うことである。教育ジャーナルの調べで、総合的な学習の時間のために人材バンクを作成してあるかという問いに、作成してあるが小学校で42%、中学校で19%。作成中が37%、45%となっている。 大人の経験を生かした授業というのは、子供たちにとって社会や歴史の生きた知識を深く知るチャンスである。  

もう一つの方法は、子供たちが地域の中に入り色々な体験をすることである。実際に経験することで、現実を知り、社会とのつながりを実感できる。地域の人々に奉仕するだけではなく、奉仕される側に立つ経験をし、子供たちがありがたみを感じる機会にしたい。   

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雨宮勇徒の研究室[教育・南海トラフ地震対策・原子力]