爆発物、火薬、爆薬、爆弾。日常生活とは縁遠い代物だと思われているかもしれませんが、実際に多くの爆弾事件が起きています。過去の出来事からひろってみましょう。
2002年1月19日の朝、新宿中央公園に設置されていたゴミ箱の前に置かれていた箱が爆発し、それを開けようとした男が重傷を負いました。また似たようなものがその月の10日に渋谷区で、12日に品川区で爆発しており、同一犯とみられています。爆発物には市販の花火の火薬が使われていたようで、新宿のものは消火器に、渋谷区の爆弾は遠隔操作で爆発する仕組みだと考えられています。
2002年5月3日にアメリカで、郵便受けに鉄パイプ爆弾が仕掛けられ、6人が負傷した事件がありました。
2001年12月22日、航空機内で、靴に仕込まれた導火線のようなものに火をつけようとした男が、乗客や乗員に取り押さえられた事件がありました。靴の踵にプラスチック爆弾が中に入っていました。前もって靴に武器(爆弾)を隠し持って搭乗しようとする可能性があると警告を出していたようで、事件以来警備が厳しくなりました。
あとは、2000年12月4日に手製の爆弾で新宿のビデオ店を爆破し、「人が壊れるのを見たかった」といった事件や、海外では自爆テロが日常茶飯事のように起きています。
2003年7月、24日未明に、「ゆりかもめ」国際展示場正面駅で起きた爆発事件があります。人通りの多い公共の場所に爆弾が仕掛けられ、犯人は、高校2年生でした。爆発物は、ロケット花火の火薬と薬品(不明)を加えたものだそうです。
ほかの事件は身近な爆発物3 日本で過去にあった爆発事件にも記載しています。
最近では、2023年(令和5年)4月15日に和歌山県和歌山市の雑賀崎漁港において、選挙演説に駆け付けた内閣総理大臣の岸田文雄に対し、男が鉄パイプ爆弾を投擲した暗殺未遂事件がありました。
今では情報化とともに、爆発物・爆弾の知識も簡単に手に入れられるようになりました。材料を揃えれば、だれでも爆発物・爆弾を製造が可能なのです。
爆発物の製造ができるといっても、簡単なわけではありません。爆薬は非常に敏感なもので、取り扱いは非常に難しいものです。もちろん製造の段階でも危険を伴います。製法・作り方がわかったとしても、原材料が手に入ったとしても、実質的に爆弾の製造は困難であるといわざるを得ません。
火薬といえば、黒色火薬や花火で使われていることは知っているでしょう。黒色火薬の原料は、硝石(硝酸カリウム )と硫黄と木炭(炭素)です。
爆薬といえば、C4、ダイナマイト、TNT(トリニトロトルエン)、プラスチック爆弾など数多く挙げられます。火薬より、物騒なもの、くらいの想像はつくでしょう。爆薬の中には信管(雷管)を用いなければ爆発しないものもあります。信管とは爆発させるための火工品で、小さなケースに反応のよい爆薬が詰められたものです。それを電気等で着火・爆発させ、その力が爆薬に伝わることで、爆発させます。
爆発という現象を科学的に言うと、急激な酸化・燃焼です。製造には強力な酸化剤が必要なことはおわかりになるでしょう。
爆薬といっても反応のしやすさ(不安定性)はまちまちです。ニトログリセリンは反応しやすいものの一つです。それを安全に用いるため、ダイナマイトが発明されました。
また軍で使われているプラスチック爆弾、C4は反応しにくく、扱いやすく作られています。どんな形にも変形でき、信管を使わなければ爆発しないのです。たとえ火を着けたとしても、着火剤としての役割しか果たしません。C4はRDXという爆薬91に対し、可塑剤9(注:結合剤や界面活性剤も含まれる)が混合された爆発物です。可塑剤が加わっているおかげで、扱いやすくなっているのです。
C4はX線では感知できず、そのため添加剤(注:爆発物マーカーと呼ばれ、現在の爆薬には添加が義務付けられている)が加えられているようです。昔のニュースで、アメリカの手荷物検査の機械か何か、ちょっとあやふやな知識なんですが、RDXと文字が書かれその下にランプがついている映像をみたことがありました。多分、今ではRDXは比重の違いか何かで判別できるようになっているのだと思います。だから靴を機械に通していたのだと思います。あやふやな情報ですいません。
補足:爆薬の検知は犬の嗅覚や爆発物から出る揮発性のガスを採取する方式や対象物の構成元素を調べる方式の二つがあるようです。最近ではペットボトルなどにガソリンなどの発火物が入ってないか封をあけないで検査できる装置が空港に導入されているようです。
爆弾というと、プラスチック爆弾やダイナマイトのほかに、原子爆弾や水素爆弾を思い浮かべる人がいることでしょう。原子爆弾の材料は核爆発を起こす高濃度のウランやプルトニウムと、臨界状態にするために圧縮するための爆薬です。水素爆弾のほうは核融合を起こす水素と核融合を引き起こすための高温・高圧を生み出す原子爆弾から成り立っています。ちなみに中性子爆弾は、原子爆弾を熱線や爆風を抑え、中性子線を増す構造にしたものです。
原子爆弾や水素爆弾の製造は不可能としか言いようがありません。まず、プルトニウムやウランが手に入りません。それも原子力発電所で使われている低濃度のものではなくて、核兵器用の高濃度のものでなければなりません。原子爆弾の製法が載った本やウェブがあるようですが、絵に描いた餅としか言いようがありません。核についての知識は危機管理[南海トラフ地震対策・原子力]にも書いています。原子力発電や核燃料、核被害の項が参考となるでしょう。
爆発物はTNTやニトログリセリンなど化学の教科書 に作り方が載っているものもありますし、ウェブで調べれば多く出ていることでしょう。日本ではこの手の情報はかなりナーバスな反応をしてしますので、正確な情報がなかなか手に入りにくいかもしれません。
爆発物の基礎となるものは、例を挙げると、硝酸塩や塩酸塩があります。これらは薬局で買えるものもあります。固形燃料や化学肥料など身近な材料で作り出せるものもあります。爆薬を用いなくても、可燃性ガスを充満させても爆発は起きます。
製法や材料は探せば見つかります。爆弾が製造できるのは映画だけの話ではなく、現実に可能だということが分かっていただけると幸いです。
続く 危機管理[南海トラフ地震対策・原子力]