サービスマネジメント
サービスマネジメントの目的と考え方
サービスマネジメントの目的と考え方
サービスマネジメントは、顧客やユーザーに価値を提供するために、サービスの計画立案、設計、移行、提供、および改善を行うための組織の活動と資源を指揮し、管理する一連の能力およびプロセスです。このアプローチにより、組織はサービスの品質を高め、顧客満足度を向上させることができます。
用語とその説明
- サービス(Service): 顧客やユーザーに価値を提供する一連の活動や成果物。サービスは、顧客のニーズや期待に応えることを目的としています。
- サービスコンポーネント(Service Component): サービスを提供するために必要な要素やリソース。これにはハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データ、人的資源などが含まれます。
- サービス品質(Service Quality): 提供されるサービスが顧客の期待にどれだけ応えられるかを示す指標。サービス品質は、信頼性、可用性、パフォーマンス、セキュリティなどの要素によって評価されます。
- サービスマネジメント(Service Management): サービスの計画立案、設計、移行、提供、および改善を行うための組織の活動と資源を管理するプロセス。これにより、サービスが効率的かつ効果的に提供され、顧客満足度が向上します。
サービスライフサイクルの段階
- 計画立案(Planning): サービスの目標や要求事項を定義し、それを実現するための戦略を策定する段階。この段階では、サービスの範囲、目標、リソース、スケジュールなどを計画します。
- 設計(Design): サービスの具体的な設計を行う段階。この段階では、サービスコンポーネントの設計、プロセスの設計、サービスレベルの定義などが行われます。
- 移行(Transition): 設計されたサービスを実際に提供するための準備を行う段階。この段階では、サービスの導入、テスト、移行計画の実行などが含まれます。
- 提供(Delivery): サービスを実際に提供し、運用する段階。この段階では、サービスの提供、監視、サポート、メンテナンスが行われます。
- 改善(Improvement): 提供されたサービスを継続的に改善する段階。この段階では、サービスの評価、フィードバックの収集、改善計画の策定と実行が行われます。
これらの段階を通じて、サービスマネジメントは、顧客に高品質なサービスを提供し、組織の目標を達成するための重要な役割を果たします。
サービスマネジメントシステムの確立,実施,維持及び継続的改善
サービスマネジメントシステムの確立、実施、維持及び継続的改善
サービスマネジメントシステム(SMS)は、サービスを効果的に提供するための管理体制を確立し、実施し、維持し、継続的に改善するための枠組みです。日本産業規格(JIS)では、JIS Q 20000(ISO/IEC 20000シリーズ)において、これらの要求事項が規定されています。
主要な用語とその説明
- サービスマネジメントシステム(SMS): サービス提供者がサービスの計画、設計、移行、提供、改善を行うための包括的な管理システム。SMSは、サービスの品質と一貫性を確保し、顧客満足度を向上させることを目的としています。
- サービスの要求事項: 顧客がサービス提供者に対して期待する具体的な要件や条件。これには、サービスレベル、パフォーマンス、可用性、セキュリティなどが含まれます。
- 顧客: サービスを受け取る個人や組織。顧客は、サービスの要求事項を定義し、サービスの評価を行います。
- サービス提供者: サービスを計画、設計、移行、提供、改善する組織。サービス提供者は、顧客の要求を満たすためにSMSを確立し、運用します。
- JIS Q 20000 の規格群(ISO/IEC 20000シリーズ): サービスマネジメントシステムの確立、実施、維持、継続的改善に関する国際規格。この規格は、サービスの品質を保証し、顧客満足度を向上させるためのベストプラクティスを提供します。
JIS Q 20000の規格群の目的と内容
JIS Q 20000(ISO/IEC 20000シリーズ)は、サービスマネジメントシステムの要求事項を定めた国際規格です。これにより、サービス提供者は以下の点を確保できます。
- 一貫したサービス提供: サービスが常に顧客の要求を満たすための基準に従って提供されるようにする。
- サービスの品質向上: 継続的な改善プロセスを通じて、サービスの品質を向上させる。
- 顧客満足度の向上: 顧客のフィードバックを収集し、それを基にサービスを改善することで、顧客満足度を向上させる。
- 法令・規制の遵守: 関連する法令や規制を遵守し、サービス提供においてリスクを低減する。
- 効率的な運用管理: リソースの効果的な管理と運用の効率化を図る。
サービスマネジメントシステムを導入することで、組織はサービス提供の全体的なパフォーマンスを改善し、顧客との信頼関係を強化することができます。JIS Q 20000の規格群は、これを実現するための具体的なフレームワークとガイドラインを提供します。
JIS Q 20000 の規格群(ISO/IEC 20000 シリーズ)ITIL
サービスマネジメントのフレームワーク: ITILの目的と考え方
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめたフレームワークで、現在、デファクトスタンダードとして世界中で活用されています。ITILは、ITサービスの品質と効率を向上させるために設計された一連のガイドラインであり、ITサービスの計画、設計、提供、運用、改善に関する具体的な手法とプロセスを提供します。
ITILの目的
- サービス品質の向上: ITサービスが一貫して高品質であることを確保し、顧客満足度を向上させる。
- 効率的なリソース利用: ITリソースの効率的な利用を促進し、コスト削減を実現する。
- リスク管理: ITサービスに関連するリスクを特定し、適切に管理することでサービスの安定性を確保する。
- 標準化: サービスマネジメントのプロセスと手法を標準化し、組織全体での一貫性を保つ。
- 継続的改善: サービス提供のプロセスを継続的に評価し、改善を図ることで、サービスの質と効率を向上させる。
ITILの考え方
ITILの基本的な考え方は、ITサービスをビジネスニーズに合わせて最適化し、提供することです。そのために、ITILはサービスライフサイクルの各フェーズで必要なプロセスと活動を定義しています。ITILのフレームワークは以下のような主要なフェーズで構成されています。
- サービス戦略(Service Strategy): ITサービスの戦略を策定し、ビジネス目標に沿ったサービスを計画する。これには、サービスポートフォリオ管理や財務管理が含まれます。
- サービス設計(Service Design): 新しいサービスや既存サービスの改良を設計する。これには、サービスカタログ管理、サービスレベル管理、キャパシティ管理が含まれます。
- サービス移行(Service Transition): 新しいサービスの展開や変更を計画し、実行する。これには、変更管理、リリース管理、配置管理が含まれます。
- サービス運用(Service Operation): サービスの日常運用を管理し、サービスの可用性と安定性を維持する。これには、インシデント管理、問題管理、イベント管理が含まれます。
- 継続的サービス改善(Continual Service Improvement): サービスのパフォーマンスを定期的に評価し、改善を図る。これには、プロセス評価、サービスレビュー、改善計画が含まれます。
ITILの用語例
- サービス: 顧客が特定の結果を達成するために使用するIT機能やプロセスの組み合わせ。
- サービスコンポーネント: サービスを構成する個々の要素や部品。
- サービス品質: サービスが顧客の要求を満たす度合い。
- サービスライフサイクル: サービスの計画、設計、移行、提供、改善の各フェーズを通じた全体的なライフサイクル。
ITILは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを提供することで、企業がITサービスを効果的に管理し、ビジネス目標を達成するためのサポートをします。
SLA
サービスレベル合意書(SLA: Service Level Agreement)
サービスレベル合意書(SLA)は、サービスの提供者と顧客との間で取り決められた契約書であり、提供されるサービスの具体的な内容およびそのパフォーマンス基準を明確に定義します。SLAは、提供されるサービスの品質や性能を測定するための基準を設定し、これに基づいてサービスの提供状況を評価します。
SLAの目的
- 明確な期待値の設定: サービス提供者と顧客の双方がサービスの内容や品質について共通の理解を持つことを目的としています。
- パフォーマンス基準の明示: サービスの可用性や応答時間など、具体的なパフォーマンス指標を明示し、サービスの品質を定量的に評価できるようにします。
- サービスレベルの管理: SLAに基づいてサービスのパフォーマンスを監視し、必要に応じて改善措置を講じることで、サービス品質の維持・向上を図ります。
- 責任の明確化: サービス提供者と顧客の責任範囲を明確にし、サービス提供における役割分担を明確にします。
SLAに含まれる代表的なサービスレベル目標
- サービス可用性(Service Availability): サービスが利用可能な時間の割合を示します。通常、パーセンテージで表され、「99.9%の可用性」のように定義されます。
- 信頼性(Reliability): サービスが中断なしに稼働し続ける能力を示します。通常、MTBF(Mean Time Between Failures: 平均故障間隔)やMTTR(Mean Time to Repair: 平均修復時間)などの指標で測定されます。
- サービス時間(Service Hours): サービスが提供される時間帯を定義します。通常、「24時間365日」や「平日9:00〜18:00」のように具体的な時間帯が記載されます。
- 応答時間(Response Time): サービスリクエストやインシデントに対する初回応答までの時間を示します。通常、インシデントの優先度によって異なる応答時間が設定されます。
- サービス及びサービスマネジメントシステムのパフォーマンス(Performance of the Service and the Service Management System): サービスそのものやサービスマネジメントシステムのパフォーマンス指標を定義します。これには、処理速度、スループット、サービスのスケーラビリティなどが含まれます。
SLAの用語例
- SLA: サービスレベル合意書。サービス提供者と顧客の間で取り決められるサービスの内容とパフォーマンス基準を定めた文書。
- サービス可用性: サービスが利用可能である時間の割合。
- 信頼性: サービスが中断せずに稼働し続ける能力。
- サービス時間: サービスが提供される時間帯。
- 応答時間: サービスリクエストやインシデントに対する初回応答までの時間。
- サービス及びサービスマネジメントシステムのパフォーマンス: サービスおよびサービスマネジメントシステムの性能指標。
SLAは、サービス提供者と顧客の双方にとって重要な文書であり、サービスの質と信頼性を確保するために欠かせないツールです。
サービスマネジメントシステムの計画及び運用
サービスマネジメントシステムの計画と支援
サービスマネジメントシステムの計画と支援
サービスマネジメントシステムの計画と支援は、組織がサービスの提供を効果的に管理し、継続的に改善するために不可欠です。このプロセスには、サービスマネジメントシステムの計画、実施、維持が含まれ、運用を支援するための必要な知識や資源の決定と維持も含まれます。
サービスマネジメントシステムの計画
- 計画の作成: サービスマネジメントシステムの目的、目標、プロセスを明確にし、それを達成するための具体的な計画を策定します。
- 実施: 計画されたプロセスや手順を実行し、サービスの提供を開始します。
- 維持: サービスマネジメントシステムの継続的な運用を確保し、必要に応じて改善します。
サービスマネジメントシステムの支援
- 資源の決定と維持: サービスを効果的に提供するために必要な人的資源、技術的資源、財務資源などを特定し、確保します。
- 力量の確保: サービスを提供するために必要なスキルや知識を持つスタッフを確保し、継続的な教育や訓練を行います。
- 認識の向上: 組織全体でサービスマネジメントの重要性を認識し、その実践を促進します。
- コミュニケーション: 効果的な内部および外部コミュニケーションを確立し、情報の流れを円滑にします。
- 文書化した情報: サービスマネジメントシステムの手順、プロセス、結果などを文書化し、必要に応じて参照できるようにします。
- 知識の管理: サービス提供に関連する重要な知識を特定し、それを維持、共有、活用するための仕組みを確立します。
関連する用語と概念
- PDCA(Plan-Do-Check-Act): サービスマネジメントシステムの継続的な改善を推進するためのサイクル。計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4段階で構成されます。
- JIS Q 9001: 品質マネジメントシステムの国際規格(ISO 9001)を日本向けに規格化したもので、サービスマネジメントの品質を確保するための基準を提供します。
- マネジメントシステム: 組織の目標を達成するためのフレームワーク。サービスマネジメントシステムもこれに含まれ、計画、実施、監視、改善のプロセスが含まれます。
- 資源: サービス提供に必要な人員、施設、機器、資金など。
- 力量: サービス提供に必要なスキルや知識。
- 認識: 組織全体でサービスマネジメントの重要性を理解し、それに基づいて行動すること。
- コミュニケーション: 情報の共有と伝達を効果的に行うプロセス。
- 文書化した情報: サービスマネジメントシステムに関連する文書や記録。
- 知識: サービス提供に必要な情報やノウハウ。
これらの要素を統合的に管理し、運用することで、サービスマネジメントシステムの効果的な運用と継続的な改善が可能となります。
サービスの計画
サービスマネジメントシステムのサービスの計画
サービスマネジメントシステムにおけるサービスの計画は、サービスの要求事項を決定し、利用可能な資源を考慮して変更要求や新規サービスの提案を評価し、優先順位を付けるプロセスです。これにより、効率的で効果的なサービス提供を実現します。
主要な要素
- サービスの要求事項: 顧客や組織のニーズを満たすために必要なサービスの機能や性能に関する詳細な条件を明確にします。これには、サービスの可用性、信頼性、応答時間などが含まれます。
- 変更要求: 現在のサービスに対する改訂や改善の要求を受け取り、その必要性や影響を評価します。これには、顧客からのフィードバックや市場の変化に対応するための変更が含まれます。
- サービスポートフォリオ: 組織が提供するすべてのサービスのリストを管理します。これには、現在稼働中のサービスだけでなく、計画中、開発中、廃止予定のサービスも含まれます。
- サービス・パイプライン: 開発中または計画中の新規サービスや変更予定のサービスのリストを管理します。これにより、将来提供する予定のサービスに関する情報を整理し、資源の適切な割り当てを支援します。
- サービスの状態: 各サービスのライフサイクルにおける現在の状態(例:計画中、開発中、稼働中、廃止)を明確にします。これにより、各サービスの進捗状況を把握し、適切な管理を行うことができます。
プロセスの流れ
- 要求事項の収集: 顧客やステークホルダーからの要求事項を収集し、分析します。これには、市場調査や競合分析も含まれます。
- 資源の評価: 利用可能な資源(人員、技術、資金など)を評価し、要求事項を満たすために必要な資源を計画します。
- 変更要求の評価: 受け取った変更要求を評価し、その影響や必要性を判断します。これには、リスク分析やコスト・便益分析が含まれます。
- 優先順位の設定: 収集した要求事項や変更要求に基づいて、サービスや変更提案の優先順位を設定します。これにより、リソースを効果的に配分し、最も重要な要求を優先的に対応します。
- 計画の策定: 優先順位に基づいて、サービス提供の計画を策定します。これには、タイムラインの設定や進捗管理の計画が含まれます。
これらのプロセスを通じて、サービスマネジメントシステムは組織が顧客の期待に応え、効率的かつ効果的にサービスを提供できるよう支援します。
サービスカタログ管理
サービスマネジメントシステムのサービスカタログ管理
サービスカタログ管理は、顧客に提供するサービスについての詳細な情報を文書化し、管理するプロセスです。このプロセスは、サービスの意図した成果やサービス間の依存関係を明確にするための重要な役割を担っています。サービスカタログ管理を適切に行うことで、顧客、利用者、およびその他の利害関係者が提供されるサービスの内容を正確に理解し、アクセスできるようになります。
サービスカタログ管理の目的
- 顧客に提供するサービスの明確な定義と説明を行う。
- サービスの意図した成果や目標を文書化し、共有する。
- サービス間の依存関係を明確にし、管理する。
- 利害関係者に対して、サービスカタログの適切な部分へのアクセスを提供する。
主要な要素
- サービスカタログ: 組織が提供するすべてのサービスについての詳細な情報を含む文書です。これには、各サービスの目的、範囲、意図した成果、提供方法、サービスレベルなどが含まれます。
- サービスの意図した成果: 各サービスが提供することを目的としている具体的な結果や効果です。これにより、顧客はサービスがもたらす価値を理解することができます。
- サービス間の依存関係: サービスが他のサービスやプロセスとどのように関連しているかを示します。これにより、サービス提供における相互依存性や協調が理解されます。
- アクセス提供: 顧客、利用者、およびその他の利害関係者に対して、サービスカタログの適切な部分へのアクセスを提供します。これにより、必要な情報を迅速かつ正確に取得できます。
プロセスの流れ
- 情報の収集: 提供するサービスに関する詳細な情報を収集します。これには、サービスの目的、範囲、提供方法、依存関係などが含まれます。
- サービスカタログの作成: 収集した情報を基に、サービスカタログを作成します。このカタログは、組織内外の利害関係者にとって理解しやすい形式で提供されます。
- サービスカタログの維持: サービスカタログは、定期的に更新し、最新の情報を維持します。これには、新しいサービスの追加や既存サービスの変更が含まれます。
- アクセスの提供: サービスカタログの適切な部分へのアクセスを、顧客、利用者、およびその他の利害関係者に提供します。これには、ウェブポータルやイントラネットなどの使用が含まれます。
サービスカタログ管理を通じて、組織は提供するサービスの透明性を高め、顧客の期待に応えるための基盤を構築します。これにより、顧客満足度の向上やサービス提供の効率化が実現されます。
資産管理
サービスマネジメントシステムの資産管理
サービスマネジメントシステムにおける資産管理は、サービスの計画、提供、および改善に必要な資産を効果的に管理するためのプロセスです。これには、ハードウェア、ソフトウェア、ライセンス、インフラストラクチャなどのすべてのIT資産が含まれます。資産管理を通じて、組織はサービスの品質を維持し、コストを最適化し、コンプライアンスを確保することができます。
資産管理の目的
- サービス提供に必要なすべての資産を適切に管理し、最適化する。
- 資産の利用状況とパフォーマンスを監視し、維持する。
- ライセンスや契約に関するコンプライアンスを確保する。
- 資産のライフサイクル全体を通じてコストを管理する。
主要な要素
- ITアセットマネジメント(ITAM): ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器など、すべてのIT資産を管理するプロセスです。これには、資産の取得、使用、保守、廃棄が含まれます。
- ソフトウェアアセットマネジメント(SAM): 組織内のソフトウェア資産を管理するプロセスです。これには、ソフトウェアライセンスの取得、インベントリの管理、使用状況の追跡、コンプライアンスの確認が含まれます。
- ライセンスマネジメント: ソフトウェアライセンスや契約に関するコンプライアンスを確保するための管理プロセスです。これにより、違法なソフトウェア使用やライセンス違反のリスクを軽減します。
プロセスの流れ
- 資産の識別と記録: 組織内のすべての資産を識別し、詳細な記録を保持します。これには、資産の種類、所有者、位置、使用状況などが含まれます。
- 資産の取得と配置: 新しい資産の取得と配置を計画し、実施します。これには、調達プロセスや資産のインストールが含まれます。
- 資産の維持と監視: 資産の状態とパフォーマンスを定期的に監視し、必要に応じてメンテナンスを行います。
- ライセンスと契約の管理: ソフトウェアライセンスや契約に関するコンプライアンスを確認し、適切に管理します。
- 資産の廃棄: 使用が終了した資産を適切に廃棄し、その記録を更新します。
関連用語
- ITアセットマネジメント(ITAM): IT資産全体の管理。
- ソフトウェアアセットマネジメント(SAM): ソフトウェア資産の管理。
- ライセンスマネジメント: ソフトウェアライセンスの管理。
資産管理を効果的に行うことで、組織はサービスの質を向上させ、コストを最適化し、コンプライアンスを確保することができます。これにより、サービスの提供がよりスムーズに行われ、顧客満足度の向上にもつながります。
構成管理
サービスマネジメントシステム 構成管理
サービスマネジメントシステムにおける構成管理は、サービスに関連するすべての構成品目(Configuration Item, CI)を識別、記録、制御、追跡、および検証するプロセスです。これにより、サービスやその他のITインフラストラクチャの正確な構成情報が管理され、適切に利用可能となります。
構成管理の目的
- 構成品目の識別と記録: サービスに関連するすべての構成品目(CI)を一意に識別し、詳細な記録を作成します。これには、各構成品目の特性、関係、および依存関係が含まれます。
- 構成情報の制御と管理: 構成品目の変更を制御し、バージョン管理を行います。これにより、システムやサービスの状態が管理され、変更の影響が評価されます。
- 構成情報の追跡と検証: 構成情報が定められた間隔で正確であるかを定期的に検証し、必要に応じて更新や補足を行います。これにより、構成情報の信頼性と正確性が維持されます。
- 構成情報の他の活動への利用: 構成情報は他のサービスマネジメント活動や決定に利用可能であるように準備されます。これにより、問題管理、変更管理、リリース管理などのプロセスで正確な情報が提供され、それらの効果的な実施が可能となります。
主要用語
- 構成品目(CI): サービス管理対象のすべての要素やコンポーネントを指します。これには、ハードウェア、ソフトウェア、ドキュメント、プロセスなどが含まれます。
- 構成情報: 各構成品目に関する詳細な情報、関係、依存関係などのデータを指します。
- 構成管理データベース(CMDB): 構成情報を格納し、管理するためのデータベースシステムです。
- 構成ベースライン: 特定の時点での構成情報の状態や設定を表す基準です。
- 構成識別: 各構成品目を一意に識別するためのプロセスや方法論です。
- 構成監査: 構成情報の正確性とコンプライアンスを確認するためのレビュープロセスです。
構成管理は、サービスの可用性や安定性を確保するために重要な役割を果たします。適切に管理された構成情報は、サービスマネジメント全体の効率性を向上させ、リスク管理を強化します。
事業関係管理
サービスマネジメントシステム 事業関係管理
事業関係管理は、顧客関係を効果的に管理し、顧客満足を維持するためのプロセスです。また、他の利害関係者とのコミュニケーションを円滑にするための取り決めを確立し、サービス提供のパフォーマンスや成果を評価します。以下に、事業関係管理の主な機能や用語を説明します。
事業関係管理の目的
- 顧客関係の管理: 顧客との関係を建設的かつ持続可能なものにするために、コミュニケーションの取り決めや管理プロセスを確立します。顧客のニーズや期待を理解し、それに応じたサービス提供を行います。
- 顧客満足の維持: 顧客満足度を高めるために、サービスの質や適時性を管理し、顧客のフィードバックを収集して利用します。顧客が満足しているかどうかを定期的に評価し、必要な改善を実施します。
- サービスのパフォーマンスレビュー: 提供されるサービスのパフォーマンスを定期的にレビューし、達成された成果やサービス満足度を評価します。これにより、運用上の課題や改善点を特定し、次の計画立案や運用改善に反映します。
- サービス満足度の測定: 顧客が提供されるサービスに対してどれだけ満足しているかを定量的および定性的に測定します。顧客の期待を満たすための目標や基準を設定し、それらを達成するための取り組みを実施します。
- 苦情管理: 顧客からの苦情やフィードバックを受け取り、適切に対応するプロセスを確立します。苦情の根本原因を特定し、再発防止策を導入することで、サービスの品質向上に寄与します。
主要用語
- 顧客満足: 顧客が提供されるサービスや製品に対してどれだけ満足しているかを示す指標です。
- サービス満足度: 特定のサービスに対する顧客の満足度を測定した結果です。サービス品質、応答時間、適時性などが含まれます。
- 苦情: 顧客が不満や問題を報告する際に提出するフィードバックやクレームです。苦情管理は、これらの問題に対処するためのプロセスを指します。
事業関係管理は、サービスマネジメントシステム全体の一部であり、顧客との信頼関係を構築し維持するために重要な役割を果たします。顧客満足度の向上は、組織の長期的な成功に直結する要素の一つです。
サービスレベル管理
サービスマネジメントシステム サービスレベル管理
サービスレベル管理は、顧客と提供するサービスについて、サービスレベル契約(SLA)を定義し、合意し、記録し、管理するプロセスです。以下に、サービスレベル管理の主な機能や用語を説明します。
サービスレベル管理の目的
- サービスレベルの定義と合意: 顧客と提供者が合意したサービスレベル目標を定義し、明確に文書化します。これには、サービスの品質基準、可用性、応答時間、サポート範囲などが含まれます。
- サービスレベルの記録と管理: SLA を文書化し、維持管理します。これには、SLA の更新、変更、契約終了時の取り決めなどが含まれます。
- パフォーマンスの監視とレビュー: SLA で定められたサービスレベル目標に照らして、サービスの実績を定期的に監視し、レビューします。これにより、実際のパフォーマンスと目標との差異や傾向を把握し、必要に応じて対策を講じます。
- パフォーマンスの報告: 監視結果やレビュー結果を基に、定期的な報告を行います。これには、顧客への透明性の確保や、サービスの改善計画の策定に活用されます。
主要用語
- サービスレベル目標: 顧客との合意に基づいて定められた、サービス提供の基準や期待値です。可用性率、応答時間、品質基準などが含まれます。
- パフォーマンス: 定められたサービスレベル目標に対する実際の達成度やパフォーマンスの質を指します。これは、定量的または定性的な指標を用いて評価されます。
サービスレベル管理は、サービス提供者と顧客との間での透明性と信頼関係の確立に重要な役割を果たします。定期的なレビューと報告により、サービスの改善と持続的な品質向上を実現します。
供給者管理
サービスマネジメントシステム 供給者管理
供給者管理は、外部供給者との関係や契約、および外部供給者のパフォーマンスを監視するプロセスです。また、内部供給者や顧客が供給者として行動する場合にも、サービスレベル目標や関係者間のインタフェースを定義し、合意文書を作成・合意することが含まれます。以下に、供給者管理の詳細を説明します。
外部供給者の管理
- 外部供給者との関係: 外部供給者との信頼関係を築き、効果的なコミュニケーションと協力を促進します。これには、定期的な会議やレビューを通じた関係の維持が含まれます。
- 契約の管理: 外部供給者との契約を管理し、契約内容を守ることを確保します。契約の更新や変更、契約終了時の手続きを適切に処理します。
- 外部供給者のパフォーマンス監視: SLA(サービスレベル契約)に基づいて、外部供給者のパフォーマンスを定期的に監視し、レビューします。これにより、サービスの品質や成果を評価し、必要な場合に改善策を講じます。
内部供給者としての顧客の管理
- サービスレベル目標の定義とインタフェースの合意: 内部供給者や顧客が提供するサービスについて、明確なサービスレベル目標を定義し、関係者間のインタフェースを明確にします。これには、期待される品質基準やサポート範囲の合意が含まれます。
- 合意文書の作成と合意: サービス提供者と顧客または内部供給者との間で、サービスレベル契約や合意文書を作成し、合意します。これにより、役割と責任の明確化が図られます。
- パフォーマンスの監視: 合意したサービスレベル目標に基づいて、内部供給者や顧客が提供するサービスのパフォーマンスを定期的に監視し、必要に応じて調整や改善を行います。
用語例
- 供給者管理: 外部および内部供給者との関係を効果的に管理し、サービスの継続的な改善を促進するプロセスです。
- 外部供給者: 組織外から提供される製品やサービスを供給する事業者や企業です。
- 内部供給者: 同じ組織内の他の部門やチームが提供するサービスや製品です。
- 供給者として行動する顧客: 顧客が自らのサービスや製品を他の組織や顧客に提供する場合の立場や役割を指します。
- アウトソーシングの利用: 外部のサービスプロバイダーに特定の業務や機能を委託することです。例としては、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)があります。
供給者管理は、サービスマネジメントシステム全体において、外部と内部の供給者との協力関係を強化し、組織のサービス提供能力を最大化する重要な役割を果たします。
サービスの予算業務及び会計業務
サービスマネジメントシステム サービスの予算業務及び会計業務
サービスの予算業務及び会計業務は、財務管理の方針とプロセスに従って行われる重要な活動です。以下に、その主なポイントを説明します。
- 財務管理の方針とプロセスに従うこと: サービスの予算業務と会計業務は、組織の財務管理方針に基づいて実施されます。これには、予算作成の基準、会計処理の規則、財務報告の基準などが含まれます。
- サービスに対する効果的な財務管理と意思決定: サービスの予算化は、費用とリソースの適切な配分を確保し、目標達成のための基準となります。これにより、組織は効果的な財務管理を実現し、戦略的な意思決定を支援します。
- 予算と実績の監視・報告: 事前に定めた間隔で、予算に対して実際の費用を監視し、報告します。予算と実績の差異を分析し、予算の達成状況や財務パフォーマンスを評価します。
- 財務予測のレビュー: 予算の実績と現在の財務状況を踏まえて、将来の財務予測を定期的にレビューします。これにより、組織は将来の財務状態や必要な調整を予測し、対策を講じる準備を整えます。
- 費用管理: 財務管理の方針に基づき、費用を管理し、組織全体の総所有費用(TCO)を考慮に入れた財務的な意思決定を支援します。これには、直接費と間接費の適切な配賦、減価償却費の計上などが含まれます。
用語例
- 予算業務: サービス提供に必要な予算を策定し、管理するプロセスです。
- 会計業務: 収益と費用を記録し、財務状況を監視・報告するプロセスです。
- 課金: サービスや製品の提供に対して顧客に対して請求を行う行為です。
- 配賦: 複数の部門やプロジェクト間で費用を適切に分配することです。
- 費用: サービス提供にかかる資金やコストのことです。
- 直接費: 特定のサービス提供に直接関連する費用です。
- 間接費: 複数のサービス提供に共通して関連する費用です。
- 減価償却: 資産価値の減少を定期的に費用として計上することです。
- 総所有費用(TCO): 製品やサービスの全体的な所有と運用にかかるすべてのコストです。
サービスの予算業務と会計業務は、サービスマネジメントシステム全体の財務面の健全性を確保し、組織が持続可能な成長を達成するための重要な要素です。
需要管理
サービスマネジメントシステム 需要管理
需要管理は、サービス提供において重要な役割を果たすプロセスであり、以下のポイントを理解します。
- 現在の需要の決定と将来の需要の予測: 定められた間隔で、サービスに対する現在の需要を評価し、将来の需要を予測します。これにより、リソースや能力の適切な配分が可能となり、サービス提供の効率性が向上します。
- 需要と消費の監視と報告: サービスの需要パターンや消費状況を定期的に監視し、報告します。これにより、サービスの利用状況を把握し、必要に応じてリソースやサポートの調整を行うことが可能です。
用語例
- 需要: 特定のサービスや製品に対する顧客の要求や必要性です。
- 需要管理: サービス提供における需要を計画し、管理するプロセスです。
- 需要予測: 将来の需要パターンやトレンドを分析し、予測することです。
需要管理は、サービス提供の効率性と顧客満足度の向上に直結する重要な要素です。適切な需要管理を行うことで、組織は市場の変化に対応し、持続可能な成長を達成する基盤を築きます。
容量・能力管理
サービスマネジメントシステム 容量・能力管理
容量・能力管理は、資源の適切な管理と計画に基づいて、サービス提供の効率性とパフォーマンスを確保するための重要なプロセスです。以下のポイントを理解します。
- 資源の容量・能力の要求事項の決定: サービス提供に必要な資源(例: サーバー、ネットワーク帯域、ストレージ)の容量・能力要件を明確にします。
- 現在及び予測される容量・能力の計画: 現在の資源使用状況と将来の需要予測に基づいて、適切な容量・能力を計画します。これにより、サービス提供の品質や可用性を確保します。
- 容量・能力の利用の監視: 実際の資源使用量を定期的に監視し、しきい値や管理指標(CPU使用率、メモリ使用率、ディスク使用率、ネットワーク使用率など)を管理します。
- パフォーマンスデータの分析と改善: 監視された容量・能力データを分析し、パフォーマンスの向上のための機会を特定します。必要に応じて、リソースの追加や最適化を行います。
用語例
- 容量・能力(キャパシティ): システムが処理可能な作業量やデータ量を示す指標です。
- 容量・能力計画: 資源の需要と供給をバランス良く調整するための計画です。
- 容量・能力管理: サービスの要求に応じた資源の管理と最適化を行うプロセスです。
- 監視: システムやネットワークのパフォーマンスや使用状況を定期的に観察し、問題の早期発見や効率的な運用を目指します。
- しきい値: 監視対象のパフォーマンスメトリクスが設定値を超えた場合に通知やアクションを起こす閾値です。
- 管理指標: システムやアプリケーションの性能を評価するための具体的な数値やデータです。
容量・能力管理は、サービスの安定性やスケーラビリティを確保するために不可欠なプロセスであり、適切な計画と実行により、組織は効果的なIT資源の活用とコスト管理を実現します。
変更管理
サービスマネジメントシステム 変更管理
@ 変更管理方針
変更管理方針は、サービスマネジメントシステムにおいて重要な役割を果たします。以下のポイントを理解します。
- 管理するサービスコンポーネント及び他の品目: 変更管理の対象となる具体的なサービスコンポーネントや他の関連品目を明確に定義します。
- 変更のカテゴリ及び管理の方法: 変更の種類(例: 標準変更、緊急変更など)やそれぞれの変更に対する適切な管理手法を定義します。
- 顧客又はサービスに重大な影響を及ぼす可能性のある変更を判断する基準: 変更の影響度合いやリスクを評価するための基準を設定し、重要な変更を適切に特定します。
用語例
- 変更管理: システムやサービスに対する変更の提案、承認、実装、監視、および制御を管理するプロセスです。
- 変更管理方針: 変更管理プロセスを遂行するための方針や基準を示した文書です。
変更管理は、サービスの安定性と可用性を確保するために不可欠なプロセスであり、計画的かつ効果的な変更管理を行うことで、リスクを最小限に抑えつつ、サービスの品質を維持・向上させることが目的です。
A 変更管理の開始サービスマネジメントシステム 変更管理の開始
変更管理の開始では、以下のプロセスが理解されます。
- 変更要求の記録・分類: サービスの追加、廃止、または改善提案など、変更の要求を適切に記録し、分類します。
- 変更管理の活動またはサービスの設計及び移行での管理: 各変更要求がどのプロセスで管理されるかを決定します。
変更要求(RFC)は、特定のサービスやシステムに関する変更を提案・申請するための文書であり、それが承認されると変更の実施が始まります。
変更管理の開始段階では、変更要求が適切に処理され、それに伴う変更がサービスの設計と移行プロセスまたは変更管理プロセスに従って実行されることが重要です。これにより、変更が迅速かつ効果的に実装され、サービスの安定性と品質が保たれます。
B 変更管理の活動サービスマネジメントシステム 変更管理の活動
変更管理の活動では、以下の主要なプロセスが理解されます。
- 変更要求の優先度を決定する: 提案された変更要求の緊急性や重要度を評価し、優先度を決定します。これにより、リソースの割り当てと変更実施の順序が決まります。
- リスク、事業利益、実現可能性及び財務影響を考慮し、変更要求を承認する: 変更要求がビジネスに与える影響を評価し、リスク管理や財務計画に基づいて承認を決定します。
- 承認された変更を計画、開発(構築)、及び試験する: 変更の実装に向けて、具体的な計画を立て、開発(構築)を進め、試験を行います。これには、変更がシステムやサービスにどのように影響するかを確認するためのテストが含まれます。
- 成功しなかった変更を戻す又は修正する活動を計画し、可能であれば試験する: 実装後に問題が発生した場合、変更を元に戻す(ロールバック)か修正する計画を立て、実施します。これにより、サービスの中断や損失を最小限に抑えます。
- 試験された変更は、リリース及び展開管理に送られ、稼働環境に展開する: 変更が正常にテストされ、承認された後、リリース管理チームによって本番環境に展開されます。このプロセスは、変更がユーザーに影響を与える前に、システムの安定性を確保する重要な段階です。
変更管理の活動は、ビジネスの要求に応じて柔軟に対応し、サービスの安定性と品質を維持しながら、持続可能な変更を実施するための重要な役割を果たします。
用語例: 優先度、変更のカテゴリ(標準変更、通常変更、緊急変更など)、ロールバック(切り戻し)、変更諮問委員会(CAB)、変更実施後のレビュー(PIR)
サービスの設計及び移行
@ 新規サービス又はサービス変更の計画
サービスの設計及び移行
サービスの設計及び移行のプロセスは、新規サービスやサービス変更を計画し、それらを効果的に実施するための枠組みを提供します。これにより、サービスが顧客の要求事項に合致し、スムーズに運用に移行できるようになります。以下に、サービスの設計及び移行に関する主要な活動と用語を説明します。
新規サービス又はサービス変更の計画
- サービスの要求事項の定義: サービス計画で決定された新規サービスやサービス変更に関する具体的な要求事項を明確にします。これには、サービスの目的、機能、性能、セキュリティ要件などが含まれます。
- サービス設計の計画: 新規サービスやサービス変更に関する設計計画を立案します。この計画には、技術的な仕様、インフラストラクチャの要件、必要なリソース、時間枠などが含まれます。
- 移行計画の策定: サービスが設計から運用に移行する際の詳細な手順を計画します。これには、移行のステップ、リスク管理、関与するチームやステークホルダーの役割などが含まれます。
- 試験と検証: 新規サービスやサービス変更が運用環境で適切に機能することを確認するための試験計画を策定し、実行します。試験の結果に基づいて、必要な調整や改善を行います。
- サービス展開の準備: サービスの展開に向けた準備を整えます。これには、ユーザー教育、ドキュメントの作成、運用手順の確立などが含まれます。
- リリース及び展開: 新規サービスやサービス変更を本番環境にリリースし、展開します。リリース後の監視とサポート体制も計画に含まれます。
これらの活動を通じて、サービスの設計及び移行プロセスは、サービスの品質を確保し、顧客の期待に応えるために不可欠な要素となります。
用語例: サービスの設計及び移行、新規サービス又はサービス変更の計画
A 設計設計
サービス設計のプロセスは、サービス計画で決定されたサービスの要求事項を満たすように、詳細な設計を行い、それを文書化することを目的としています。このプロセスは、サービスの品質を確保し、顧客の期待に応えるために重要です。また、SLA(サービスレベル合意書)、サービスカタログ、契約書などの文書の新設や更新も含まれます。
設計の主要な活動
- サービス要求事項の確認: サービス計画で定義された要求事項を詳細に確認し、設計に反映させます。これには、機能要件と非機能要件の両方が含まれます。
- サービス受入れ基準の設定: サービスが顧客の期待を満たすことを保証するための受入れ基準を設定します。これにより、サービスが提供前にすべての要件を満たしていることを確認できます。
- 設計・開発: サービスの具体的な設計を行います。技術的な仕様、インフラストラクチャの要件、セキュリティ対策など、サービス提供に必要なすべての要素を詳細に設計します。
- サービス設計書の作成: 設計した内容を文書化し、サービス設計書としてまとめます。この文書は、サービスの提供や運用におけるガイドラインとなります。
- 非機能要件の定義: サービスのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性、拡張性などの非機能要件を定義し、設計に組み込みます。
- SLAの新設・更新: サービスの性能や品質に関する合意事項を定義したSLAを新設または更新します。SLAは、顧客とサービス提供者の間で合意される重要な文書です。
- サービスカタログの新設・更新: 提供するサービスの詳細を記載したサービスカタログを新設または更新します。これにより、顧客は提供されるサービスの内容を理解できます。
- 契約書の新設・更新: サービス提供に関する契約書を新設または更新します。これには、サービスの範囲、料金、契約条件などが含まれます。
これらの活動を通じて、サービス設計プロセスは、サービスの品質を保証し、顧客のニーズに応えるための基盤を築きます。
用語例の解説
- サービス受入れ基準: サービスが顧客の要求を満たしているかどうかを判断するための基準です。これにより、サービスが正式に受け入れられる前に、必要な条件が満たされていることを確認できます。
- 設計・開発: サービスの具体的な仕様や機能を詳細に設計し、開発するプロセスです。これには、システムアーキテクチャ、インターフェース、データモデルなどの設計が含まれます。
- サービス設計書: サービスの設計内容を文書化したものです。この文書には、サービスの構成要素、動作、要件、制約などが詳細に記載され、サービス提供や管理のガイドラインとして使用されます。
- 非機能要件: サービスの機能以外の要件で、性能、信頼性、セキュリティ、拡張性などが含まれます。これらは、サービスの全体的な品質やユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与えます。
構築及び移行
構築及び移行プロセスは、文書化された設計に基づいてサービスを構築し、サービス受入れ基準を満たしていることを確認するための試験を行います。新規サービスやサービス変更を稼働環境に展開するためには、リリース及び展開管理を使用します。
構築及び移行の主要な活動
- 構築: 文書化された設計に基づいてサービスやシステムを構築します。開発プロセスでは、継続的インテグレーションを利用して品質を維持しつつ、迅速なデプロイを実現します。
- 試験: 構築されたサービスがサービス受入れ基準を満たしていることを確認するために、受入れテストや運用テストを実施します。これにより、サービスが期待通りに動作することを検証します。
- 移行計画: 新規サービスやサービス変更を稼働環境に展開するための詳細な計画を作成します。これには、移行リハーサルや移行判断などのステップが含まれます。
- リリース及び展開管理: 新規サービスやサービス変更を稼働環境に展開するためのプロセスを管理します。これには、運用環境への引き渡しと展開が含まれます。
- 移行の通知: 移行の各ステップで関係者に通知を行い、必要な情報を提供します。これにより、移行プロセスがスムーズに進行することを確保します。
- 移行評価: 移行プロセスの評価を行い、問題点や改善点を特定します。これにより、将来の移行プロセスの質を向上させます。
- 運用引継ぎ: 新しいサービスや変更されたサービスを運用チームに引き渡し、運用を開始します。これには、必要なドキュメントやトレーニングも含まれます。
用語例の解説
- 構築: サービスやシステムを設計に基づいて開発するプロセスです。
- 継続的インテグレーション: 開発者が頻繁にコードを統合し、テストを自動化することで、品質を維持しながら迅速なデプロイを実現する手法です。
- 移行: 新規サービスや変更されたサービスを稼働環境に導入するプロセスです。
- 運用サービス基準: サービスが運用環境でどのように動作するべきかを定義した基準です。
- 業務及びシステムの移行: 業務プロセスやシステムを新しい環境に移行するプロセスです。
- 移行計画: 移行プロセスの詳細な計画です。
- 移行リハーサル: 移行のリハーサルを行い、本番移行に備えるプロセスです。
- 移行判断: 移行プロセスを進めるかどうかの判断を行うステップです。
- 移行の通知: 移行プロセスの各ステップで関係者に通知を行うことです。
- 移行評価: 移行プロセスの評価を行い、問題点や改善点を特定することです。
- 運用テスト: サービスが運用環境で正常に動作するかを確認するためのテストです。
- 受入れテスト: サービスが要求事項を満たしているかを確認するためのテストです。
- 運用引継ぎ: 新しいサービスや変更されたサービスを運用チームに引き渡すプロセスです。
リリース及び展開管理
リリース及び展開管理
リリース及び展開管理は、新規サービスまたはサービス変更、およびサービスコンポーネントを稼働環境に展開するためのプロセスです。このプロセスには、リリースの計画、実施、監視、分析、および改善が含まれます。以下に、リリース及び展開管理の主要な活動と関連する用語を説明します。
リリース及び展開管理の主要な活動
- リリースの計画: 新規サービスやサービス変更を稼働環境に展開するための詳細な計画を作成します。計画には、スケジュール、リソースの割り当て、リスク管理などが含まれます。
- リリースの実施: 計画に基づいてリリースを実行し、サービスやコンポーネントを稼働環境に展開します。これには、必要な手順やツールを使用してリリースを進めることが含まれます。
- 監視と分析: リリースの成功または失敗を監視し、結果を分析して改善の機会を特定します。これにより、リリースプロセスの質を向上させます。
- レビュー: 分析結果をレビューし、リリースの成功要因や失敗要因を特定します。この情報を基に、将来のリリース計画を改善します。
- 情報共有: リリースの成功や失敗に関する情報、および将来のリリース期日についての情報を他のサービスマネジメント活動に利用可能にします。これにより、関係者間のコミュニケーションを円滑にします。
用語例の解説
- リリース及び展開管理: 新規サービスやサービス変更を稼働環境に展開するための計画、実施、監視、改善を行うプロセスです。
- リリース: 新しいサービスやサービスの変更を稼働環境に導入することです。リリースには緊急リリースなどの種類があります。
- 緊急リリース: 重要なバグ修正やセキュリティパッチなど、即時対応が必要なリリースです。
- 展開: 計画に基づいてサービスやコンポーネントを稼働環境に配置することです。
- リリースの受入れ基準: リリースが受け入れ可能かどうかを判断するための基準です。
- 受入れ試験環境: リリースをテストするための環境です。稼働環境に近い設定でテストを行います。
- 稼働環境: サービスやシステムが実際に運用される環境です。
- リリースの配付: リリースされたサービスやコンポーネントを関係者に提供することです。
- 継続的デリバリー: ソフトウェアの変更を頻繁にリリースし、顧客に価値を提供する手法です。
- 継続的デプロイ: 継続的デリバリーの一部であり、コード変更を自動的に稼働環境に展開する手法です。
インシデント管理
@ インシデントの対応
インシデント管理
インシデント管理は、サービスに対する計画外の中断、サービス品質の低下、または顧客や利用者へのサービスに影響しない事象(インシデント)に対処するためのプロセスです。このプロセスでは、インシデントの記録、分類、優先順位付け、エスカレーション、解決、および終了を行います。
インシデント対応の主なステップ
- 記録と分類: インシデントが発生した場合、その詳細を記録し、種類や影響に基づいて分類します。
- 優先順位付け: インシデントの影響および緊急度を考慮して、対応の優先順位を決定します。重要なインシデントは迅速に対応する必要があります。
- エスカレーション: 必要に応じて、インシデントを適切な担当者やチームにエスカレーションします。これには、機能的エスカレーション(特定の技術や専門知識を持つチームへのエスカレーション)と階層的エスカレーション(上級管理者へのエスカレーション)が含まれます。
- 解決: インシデントを解決し、サービスを正常な状態に戻します。回避策を使用して一時的に問題を解決することもあります。
- 終了: インシデントが完全に解決された後、その詳細を記録し、終了します。インシデント管理プロセスを通じて得られた知識を今後の改善に活かします。
用語例の解説
- インシデント管理: インシデントに対処するための一連のプロセスと手順。
- インシデント: サービスの中断、品質の低下、または影響のない事象など、サービス運用に影響を与える出来事。
- 記録: インシデントの詳細を文書化すること。
- 分類: インシデントを種類や影響に基づいてカテゴリー分けすること。
- 影響: インシデントがサービスや顧客に与える影響の程度。
- 緊急度: インシデントに対処する必要性の高さ。
- 優先順位: インシデントの影響と緊急度に基づいて対応の優先度を決定すること。
- 解決目標時間: インシデントを解決するまでの目標時間。
- エスカレーション: インシデントを適切な担当者や管理レベルに引き継ぐプロセス。
- 機能的エスカレーション: 特定の技術や専門知識を持つチームへのエスカレーション。
- 階層的エスカレーション: 上級管理者へのエスカレーション。
- 解決: インシデントを修正し、サービスを正常な状態に戻すこと。
- 回避策: 一時的にインシデントを解決するための対策。
- 終了: インシデントが解決された後、その詳細を記録し、インシデント管理プロセスを終了すること。
- インシデントモデル: 以前に対応したインシデントに基づく標準化された対応手順。
サービスマネジメントシステムの計画及び運用 重大なインシデントの対応
サービスマネジメントシステムにおいて、重大なインシデントの対応は非常に重要です。重大なインシデントとは、サービスに大きな影響を与えるインシデントのことを指します。これらのインシデントに迅速かつ適切に対応するためには、特定の基準を設け、それに基づいてインシデントを特定、分類、管理することが必要です。さらに、重大なインシデントについてはトップマネジメントへの迅速な通知が求められます。
重大なインシデント対応の主なステップ
- 基準の決定: 重大なインシデントを特定するための基準を明確に定めます。これには、サービスの中断の範囲、影響を受けるユーザー数、財務的影響などが含まれます。
- 分類と管理: 重大なインシデントが発生した場合、それを迅速に分類し、適切な手順に従って管理します。文書化された手順を用いて、一貫性のある対応を行います。
- 通知: 重大なインシデントが発生した際は、トップマネジメントに迅速に通知します。これにより、必要なリソースや意思決定を迅速に行うことができます。
用語例の解説
- 重大なインシデント: サービスに大きな影響を与える、計画外の中断や重大な品質低下を引き起こす事象。サービスの広範な中断、大量のユーザーへの影響、重大な財務的損失などが含まれる。
重大なインシデントの対応は、サービスの信頼性と顧客満足度を維持するために不可欠です。適切な基準と手順を設定し、迅速かつ効果的な対応を行うことで、サービスの中断による影響を最小限に抑えることができます。
サービス要求管理
サービスマネジメントシステムの計画及び運用 サービス要求管理
サービスマネジメントシステムにおけるサービス要求管理は、サービス要求に対して適切に対応するためのプロセスです。サービス要求管理のプロセスは、要求の記録、分類、優先順位付け、実現、終了の各ステップで構成されます。また、サービス要求の実現に関する指示書を関係者が利用できるようにすることも重要です。
サービス要求管理の主なステップ
- 記録し,分類する: すべてのサービス要求を記録し、それぞれの要求を適切に分類します。分類には、要求の種類や影響範囲などの基準が使用されます。
- 優先順位付けをする: サービス要求の緊急度や重要度に基づいて優先順位を付けます。これにより、重要な要求に対して迅速に対応することができます。
- 実現する: 優先順位付けされたサービス要求に基づいて、具体的な対応を実施します。必要に応じて、関係者に指示を出し、サービス要求を実現します。
- 終了する: サービス要求が満たされた後、要求を終了として記録します。これにより、プロセス全体の完了を確認し、記録を更新します。
サービス要求の実現に関する指示書
サービス要求を実現するためには、関係者が具体的な手順や指示を利用できるようにすることが重要です。サービス要求の実現に関する指示書は、各要求に対応するための具体的な手順を示した文書であり、関係者が迅速かつ正確に対応できるよう支援します。
用語例の解説
- サービス要求管理: サービス要求に対して適切に対応するためのプロセス。
- サービス要求: 顧客やユーザーからの具体的なサービスに対する要求や依頼。
- 記録: サービス要求を公式に記録し、追跡できるようにすること。
- 分類: サービス要求を種類や影響度などに基づいて分類すること。
- 緊急度: サービス要求の対応が必要とされる緊急性の度合い。
- 優先順位: サービス要求に対して優先的に対応すべき順序を決定すること。
- 実現: サービス要求に対する具体的な対応を実施すること。
- 終了: サービス要求が満たされ、プロセスが完了したことを記録すること。
- サービス要求の実現に関する指示書: サービス要求を実現するための具体的な手順や指示を示した文書。
サービス要求管理は、顧客やユーザーのニーズに迅速かつ的確に対応するために重要です。適切なプロセスと指示書を用いることで、サービスの品質を維持し、顧客満足度を高めることができます。
問題管理
問題管理
問題管理は、インシデントのデータと傾向を分析し、根本原因を特定することで、インシデントの発生や再発を防止するためのプロセスです。問題管理の目的は、サービスの品質を向上させ、顧客満足度を高めることです。問題管理の主なステップと必要な用語について以下に説明します。
問題管理の主なステップ
- 記録し,分類する: すべての問題を記録し、それぞれの問題を適切に分類します。分類には、問題の種類や影響範囲などの基準が使用されます。
- 優先順位付けする: 問題の緊急度や重要度に基づいて優先順位を付けます。これにより、重要な問題に対して迅速に対応することができます。
- 必要であれば,エスカレーションする: 問題が解決困難な場合や重大な影響を与える場合、適切な担当者や上位管理者にエスカレーションします。
- 可能であれば,解決する: 問題の根本原因を特定し、適切な対策を講じて問題を解決します。
- 終了する: 問題が解決された後、問題を終了として記録します。これにより、プロセス全体の完了を確認し、記録を更新します。
問題管理の補足プロセス
- 変更管理: 問題管理に必要な変更は、変更管理の方針に従って管理されます。これにより、変更の影響を最小限に抑えつつ、効果的な解決が可能となります。
- 予防処置: 根本原因が特定されているが、問題が恒久的に解決されていない場合、問題がサービスに及ぼす影響を低減または除去するための処置を決定します。
- 既知の誤り: 問題の根本原因が特定されたが、完全に解決されていない場合、その情報を「既知の誤り」として記録します。既知の誤りは、将来のインシデントの迅速な解決に役立ちます。
用語例の解説
- 問題管理: 問題の特定、分析、解決を行うプロセス。
- 問題: サービスの品質やパフォーマンスに悪影響を及ぼす根本的な原因。
- 傾向分析: インシデントや問題のデータを分析し、共通のパターンや傾向を特定すること。
- 根本原因: 問題の発生原因となる根本的な要因。
- 予防処置: 問題の再発を防ぐための対策。
- 記録: 問題を公式に記録し、追跡できるようにすること。
- 分類: 問題を種類や影響度などに基づいて分類すること。
- 優先順位付け: 問題に対して優先的に対応すべき順序を決定すること。
- エスカレーション: 問題が解決困難な場合や重大な影響を与える場合、適切な担当者や上位管理者に報告すること。
- 解決: 問題の根本原因を特定し、適切な対策を講じて問題を解決すること。
- 終了: 問題が解決され、プロセスが完了したことを記録すること。
- 既知の誤り: 根本原因が特定されているが完全に解決されていない問題。
問題管理は、インシデントの再発を防止し、サービスの安定性と信頼性を向上させるために重要な役割を果たします。適切な問題管理プロセスを導入することで、サービスの品質向上と顧客満足度の向上を実現します。
サービス可用性管理
サービス可用性管理
サービス可用性管理は、サービスの継続的な運用を確保し、サービスの中断を最小限に抑えるためのプロセスです。サービスの可用性は、サービスが顧客に提供される時間の割合を示し、顧客満足度に直接影響を与える重要な指標です。以下に、サービス可用性管理の主なステップと関連する用語について説明します。
サービス可用性管理の主なステップ
- サービス可用性のリスクのアセスメントを行う: サービスの可用性に影響を与える可能性のあるリスクを識別し、評価します。これにより、潜在的な脅威に対する対策を講じることができます。
- サービス可用性の要求事項及び目標を決定する: 顧客やビジネスのニーズに基づいて、サービスの可用性に関する具体的な要求事項と目標を設定します。
- サービス可用性を監視し,結果を記録し,目標と比較する: サービスの可用性を継続的に監視し、実際の可用性データを記録します。これにより、設定した目標と実際のパフォーマンスを比較できます。
- 計画外のサービス可用性の喪失を調査し,必要な処置をとる: サービスの中断や可用性の低下が発生した場合、その原因を調査し、再発防止のための対策を講じます。
用語例の解説
- サービス可用性管理: サービスの可用性を確保し、維持するためのプロセス。
- サービス可用性: サービスが利用可能な時間の割合。
- 信頼性: サービスが故障することなく、一定期間正常に動作する能力。
- 回復力: サービスが障害から迅速に回復する能力。
- 保守性: サービスが迅速かつ効率的に修復される能力。
- MTBF (Mean Time Between Failures): 故障と故障の間の平均時間。
- MTTR (Mean Time to Repair): 故障から修復までにかかる平均時間。
サービス可用性管理は、サービスの品質を維持し、顧客満足度を高めるために不可欠です。適切な管理を行うことで、サービスの信頼性と回復力を向上させ、サービスの中断を最小限に抑えることができます。
サービス継続管理
サービス継続管理
サービス継続管理は、サービスの中断に対するリスクを評価し、サービスの中断が発生した場合に迅速かつ効果的に対応するための計画を策定するプロセスです。サービスの継続性を確保することで、ビジネスの運用を維持し、顧客への影響を最小限に抑えることができます。以下に、サービス継続管理の主なステップと関連する用語について説明します。
サービス継続管理の主なステップ
- サービス継続のリスクのアセスメントを行う: サービスの中断に対する潜在的なリスクを識別し、評価します。これにより、重要なリスクに対する対策を優先的に講じることができます。
- サービス継続の要求事項を決定する: ビジネスのニーズや顧客の期待に基づいて、サービスの継続性に関する具体的な要求事項を設定します。
- サービス継続計画を作成し,実施し,維持する: サービス継続計画を策定し、必要なリソースや手順を明確にします。計画の実施と継続的な維持を行い、実効性を確保します。
- サービス継続計画の試験: あらかじめ定めた間隔やサービス環境に重大な変更があった場合、計画の実効性を確認するために試験を行います。試験結果に基づいて、計画を修正・改善します。
用語例の解説
- 事業継続計画(BCP): 企業全体の事業継続性を確保するための計画。
- サービス継続計画: 特定のサービスの継続性を確保するための計画。
- 復旧: サービス中断後にサービスを再開するプロセス。
- RTO(目標復旧時間): サービスが中断してから再開するまでの目標時間。
- RPO(目標復旧時点): データの損失を最小限に抑えるために復旧される目標時点。
- コールドスタンバイ: 必要に応じて手動でアクティブにする予備システム。
- ホットスタンバイ: 常に稼働準備が整っている予備システム。
- ウォームスタンバイ: 必要な時にすぐに稼働可能な状態にある予備システム。
サービス継続管理は、ビジネスの運用を保護し、サービスの信頼性を高めるために不可欠なプロセスです。効果的なサービス継続計画を策定し、定期的に試験・更新することで、予期せぬ中断に対する備えを強化し、サービスの中断時にも迅速に対応できる体制を整えることができます。
情報セキュリティ管理
情報セキュリティ管理
情報セキュリティ管理は、組織の情報資産を保護するための一連の方針、手順、および技術的な対策を含むプロセスです。これにより、情報の機密性、完全性、および可用性を確保し、セキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えることができます。以下に、情報セキュリティ管理の主な要素と関連する用語について説明します。
情報セキュリティ管理の主な要素
- 情報セキュリティ方針: 組織全体で情報セキュリティを確保するための基本的な方針を策定します。この方針には、情報の保護に関する組織の姿勢、目標、および責任が含まれます。
- 情報セキュリティ管理策: 情報セキュリティ方針に基づき、具体的な管理策や手順を設計・実施します。これには、アクセス制御、データ保護、ネットワークセキュリティなどの技術的および管理的な対策が含まれます。
- 情報セキュリティインシデントに関する事項: 情報セキュリティインシデント(例えば、データの不正アクセスや情報漏洩)が発生した場合に対応するための手順を確立します。インシデントの検知、報告、対応、復旧のプロセスを定義します。
用語例の解説
- 情報セキュリティ方針: 組織の情報セキュリティに関する基本的な方針や指針。
- 情報セキュリティ管理策: 情報セキュリティを確保するための具体的な技術的および管理的対策。
- 情報セキュリティインシデント: 情報セキュリティに関連する事件や事象(例:データ漏洩、サイバー攻撃)。
ISO/IEC 27000シリーズについて
ISO/IEC 27000シリーズは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要求事項を規定した国際規格の一群です。このシリーズは、情報セキュリティの管理策やベストプラクティスを提供し、組織が効果的な情報セキュリティ管理を導入し、運用するのを支援します。日本では、これらの国際規格を基にしたJIS規格群が制定されています。
ISO/IEC 27000シリーズには、以下のような規格が含まれます:
- ISO/IEC 27001: ISMSの要求事項を規定。
- ISO/IEC 27002: 情報セキュリティ管理策の実践のための指針。
- ISO/IEC 27005: 情報セキュリティリスクマネジメントの指針。
これらの規格を適切に活用することで、組織は情報セキュリティのリスクを管理し、セキュリティインシデントの発生を防ぐための包括的なフレームワークを構築することができます。
パフォーマンス評価及び改善
パフォーマンス評価
パフォーマンス評価は、サービスマネジメントシステムのパフォーマンスと有効性を継続的に監視し、分析し、評価するプロセスです。また、サービスの報告を通じて、システムおよびサービスの状態や成果を関係者に伝えることも重要な要素となります。以下に、パフォーマンス評価の主な活動と関連する用語について説明します。
@ 監視,測定,分析及び評価
- 監視: サービスマネジメントシステムのパフォーマンスや有効性を継続的に観察し、データを収集します。
- 測定: 収集したデータを定量的に測定し、基準と比較します。
- 分析: 測定結果を詳細に分析し、サービスマネジメントの目的に対する達成度を評価します。
- 評価: 分析結果に基づいて、サービスの有効性や改善点を評価します。
これらの活動により、サービスマネジメントシステムが設定された目標をどの程度達成しているか、またサービスが顧客の要求事項を満たしているかを評価します。
A サービスの報告
- 報告の要求事項及び目的の決定: サービスの報告に必要な情報や目的を明確にします。これには、関係者が必要とする情報の種類や報告の頻度が含まれます。
- 報告の作成: サービスマネジメントシステムおよびサービスのパフォーマンスと有効性に関する報告書を作成します。この報告書は、サービスの状態や改善の必要性を関係者に伝えるために使用されます。
報告書は、意思決定の基礎となる重要な資料であり、サービスの改善や戦略の見直しに役立ちます。
用語例の解説
- サービスの報告: サービスマネジメントシステムのパフォーマンスや有効性についての情報を記載した報告書。
- パフォーマンス: サービスマネジメントシステムが設定された目標や基準に対してどの程度達成しているかの指標。
- 有効性: サービスやサービスマネジメントシステムが、顧客の要求事項を満たしているかの度合い。
- 傾向情報: パフォーマンスデータの長期的な変動やパターンを示す情報。
これらの用語を理解し、適切に使用することで、サービスマネジメントシステムのパフォーマンス評価がより効果的に行われます。
改善
パフォーマンス評価及び改善 改善
パフォーマンス評価及び改善においては、不適合の管理と是正処置、そして継続的改善の両方が重要な要素です。これらの活動を通じて、サービスマネジメントシステムの品質と効果を維持し、向上させることができます。以下に、不適合及び是正処置と継続的改善について説明します。
@ 不適合及び是正処置
不適合が発生した場合に取るべき対応について理解することが重要です。不適合及び是正処置に関する主要な活動は次の通りです:
- 不適合の管理と修正: 不適合が発生した際に、その不適合を特定し、適切に管理し修正します。
- 結果への対処: 不適合によって引き起こされた結果に対処します。
- 再発防止: 不適合が再発しないようにするために、必要な処置の必要性を評価し、実施します。
これらの活動により、組織は問題が再び発生しないようにし、サービスの品質を保つことができます。
用語例の解説
- 不適合: 期待される基準や要求事項を満たしていない状態や結果。
- 是正処置: 不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための措置。
A 継続的改善
サービスマネジメントシステム及びサービスの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善することも重要です。継続的改善に関する主な活動は次の通りです:
- 改善の機会の特定: サービスやプロセスの改善点を継続的に見つけ出し、評価します。
- 評価基準の決定: 改善の機会に対して適用する評価基準を決定します。
- 改善活動の管理: 承認された改善活動を計画し、管理します。
これらの活動により、組織は持続的にサービスの質を向上させ、顧客満足度を高めることができます。
用語例の解説
- 継続的改善: サービスやプロセスを継続的に見直し、向上させるための活動。
- プロセス能力水準(プロセス成熟度水準): プロセスの成熟度や効率性を示す指標。
- プロセスアセスメント: プロセスの現状を評価し、改善の必要性や効果を分析する手法。
- ギャップ分析: 現状と理想の状態の差を分析し、改善のための具体的な方策を導き出す手法。
- CSF(Critical Success Factors、重要成功要因): 目標達成に必要な重要な要因や条件。
- KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標): 組織の目標達成度を測るための主要な指標。
これらの用語を理解し、適切に活用することで、サービスマネジメントシステムのパフォーマンス評価と改善がより効果的に行われます。
サービスの運用
システム運用管理
システム運用管理
システム運用管理では、日常の運用計画、障害発生時の対応計画、運用負荷の低減計画などが重要な活動です。これらの計画は、システムの安定性と効率性を確保し、サービス提供の中断を最小限に抑えるために必要です。
運用の資源管理も同様に重要であり、設備、コンピュータシステム、データ、マニュアル、作成した成果物、そして運用要員を適切に管理し、組織の目標に沿った効果的な運用を行います。
主要な活動
1. 日常の運用計画: システムの通常の運用を計画し、日常業務をスムーズに進めるためのスケジュールや手順を定めます。
2. 障害発生時の対応計画: システム障害が発生した際の対応策を計画し、サービスの中断を最小限に抑えるための手順を準備します。
3. 運用負荷の低減計画: システムの負荷を管理し、運用の効率性と安定性を向上させるための計画を策定します。
4. 容量・能力管理: システムの利用状況をモニタリングし、将来の需要に備えて適切なリソースを確保します。
5. 情報セキュリティ管理: システムとデータのセキュリティを保護するためのポリシーや手順を実施し、セキュリティリスクを管理します。
6. サービス可用性管理: サービスの可用性を監視し、目標に対して実績を評価して必要な対策を実施します。
7. サービス継続管理: 事業継続計画を策定し、システム障害や災害発生時の迅速な回復を保証します。
これらの活動を通じて、組織はシステムの安定性とサービス品質を確保し、顧客や利害関係者に価値を提供します。
運用オペレーション
運用オペレーション
運用オペレーションでは、システムを安定稼働させるために必要な監視、操作、および状況連絡を定められた手順に沿って実施することが重要です。また、システムの運用においては、作業指示書に基づいて操作を行うことが理解されています。
主要な活動
1. システムの監視と操作: 定められた手順に基づいて、システムの動作を監視し、必要に応じて操作を行います。
2. ジョブスケジューリング: ジョブ(処理やタスク)の実行順序やタイミングを設計し、運用計画に基づいてスケジュールを調整します。
3. アウトプットの管理: ジョブやプロセスの実行結果や出力物の管理を行い、必要に応じて確認や保管を行います。
4. バックアップ: データやシステムのバックアップを定期的に実施し、データの保全を確保します。
5. ジョブの復旧と再実行: ジョブの実行においてエラーや中断が発生した場合に、復旧手順に基づいて再実行を行います。
6. 運用支援ツール: 監視ツールや診断ツールなどのツールを活用して、運用業務を効率化し、問題の早期発見や解決を支援します。
7. 業務運用マニュアル: 運用業務の手順やポリシーをまとめたマニュアルを作成し、運用スタッフが適切に業務を行うためのガイドとします。
これらの活動を通じて、組織はシステムの安定稼働を確保し、ビジネス目標の達成に向けた基盤を支えます。
サービスデスク
サービスデスク
サービスデスクは、サービスの利用者からの問い合わせに対応するための単一の窓口機能を提供し、さまざまな活動を行います。以下に、サービスデスクの主な活動について説明します:
- 問い合わせ対応: サービスの利用者からの問い合わせや要求を受け付け、適切に処理します。
- 引継ぎ: 解決できない問題や専門的な対応が必要な場合、他の部署や専門家への引き継ぎを行います。
- 対応結果の記録: 問い合わせ内容や対応結果を詳細に記録し、後で参照できるようにします。
- 記録の管理: 記録された情報を整理し、効率的に管理します。
サービスデスクは、利用者満足度の向上や問題解決の迅速化に貢献する重要な機能です。以下に、用語例を示します:
- SPOC(Single Point Of Contact): 問い合わせや要求のための単一の連絡窓口。
- コールセンター: 電話を中心とした問い合わせ対応のセンター。
- CTI(Computer Telephony Integration): 電話システムとコンピュータシステムを統合して効率的な対応を支援する技術。
- FAQ(Frequently Asked Questions): よくある質問とその回答をまとめた情報。
- 応対マニュアル: 問い合わせ対応の手順やガイドラインを記載した文書。
- 知識ベース: 問題解決や対応に役立つ情報を集約したデータベース。
- 一次サポート、二次サポート、三次サポート: 問い合わせや問題の難易度に応じたサポートのレベル分け。
- サービスデスク組織の構造: ローカルサービスデスク、バーチャルサービスデスク、中央サービスデスク、フォロー・ザ・サンなど、さまざまな組織構造や運用形態。
- AI の活用(チャットボットなど): 人工知能を利用した自動応答や問題解決支援。
これらの用語や機能を理解し、適切に活用することで、サービスデスクは効果的なサポート活動を実現し、組織の運用効率を向上させます。
ファシリティマネジメント
(1)ファシリティマネジメント
ファシリティマネジメントの目的と考え方
ファシリティマネジメントは、コンピュータシステムやネットワークの施設基盤の設計、構築、管理、運営に関わる活動です。その目的と考え方について以下に説明します。
@ ファシリティマネジメントの目的と考え方
ファシリティマネジメントの主な目的は、ITインフラストラクチャの施設基盤を効果的かつ効率的に管理し、以下のような利点をもたらすことです:
- コストの削減: 運営コストやエネルギー消費などを最適化し、経済的な運営を実現します。
- 快適性の確保: 施設の環境条件(温度、湿度など)を管理し、快適な作業環境を提供します。
- 安全性の確保: 電源や通信回線の冗長化、防災・防犯設備の整備により、システムの安定性と安全性を保ちます。
また、ファシリティマネジメントは、ITインフラの長寿命化や環境負荷の低減なども目指します。
A 施設管理・設備管理
データセンターなどの施設やコンピュータ、ネットワークなどの設備の管理には、以下のような活動が含まれます:
- 電源や通信設備の冗長化: 電源系統や通信回線の二重化や冗長化を行い、運用中の障害に対する耐性を高めます。
- バックアップ環境の整備: システムやデータのバックアップ環境を整備し、災害発生時の復旧を迅速に行います。
- 空調設備の管理: データセンター内の温度・湿度を制御し、設備の正常な動作を維持します(例:コールドアイル、ホットアイルなどの設計と管理)。
- 建物のアクセス管理: 施設への物理的なアクセスを制限し、セキュリティを強化します。
これらの管理活動により、施設の安全性と運用効率を向上させます。
用語例の解説
- 施設管理: 建物全体の管理、免震装置やサージ防護デバイスの設置などの施設保全活動。
- 電気設備: UPS(無停電電源装置)、自家発電設備などの電源関連設備。
- 空調設備: データセンター内の空調機器の設置と管理、コールドアイルやホットアイルの設計と運用。
- 通信設備: MDF(メインディストリビューションフレーム)、IDF(インターネットディストリビューションフレーム)などの通信設備。
これらの活動により、ITインフラの運用コストを最小限に抑えながら、高い性能と安全性を維持することが可能となります。
ファシリティマネジメント
B 施設・設備の維持保全
施設・設備の維持保全は、適切な状態に保ちながら長期間運用するための重要な活動です。以下にその内容を詳しく説明します:
- 定期的なメンテナンス: 施設や設備の定期的な点検や保守作業を実施し、問題を未然に防ぎます。
- 修繕計画の立案: 施設や設備の寿命を延ばすために、定期的な修繕計画を策定します。これには、予算の見積もりや優先順位付けも含まれます。
- ライフサイクル費用の削減: 水道光熱費、保守・メンテナンス費、修繕費などを効率的に管理し、ライフサイクルコストを削減します。
- 施設・設備の長寿命化: 適切な管理と計画により、施設や設備の寿命を延ばし、持続可能な運用を目指します。
これらの活動により、施設や設備の効率的な管理が実現され、運用コストの削減と設備の耐久性向上が図られます。
用語例の解説
- 施設・設備の維持保全: 施設や設備の適切な状態維持や長寿命化を目指す管理活動。
C 環境側面
環境側面では、地球環境に配慮したIT製品やインフラストラクチャの利用が重要です。以下にその詳細を示します:
- グリーン IT: 環境負荷を軽減し、エネルギー効率の高いITシステムの導入や運用を推進します。
- 環境保護と資源の有効活用: IT資産のリサイクルや再利用を通じて、環境保護と資源の有効活用を促進します。
- データセンタ総合エネルギー効率指標(GEC、PUE、ITEE、ITEUなど): データセンターのエネルギー消費効率を測定し、持続可能な運用を目指します。
これらの取り組みにより、ITインフラの利用において地球環境への負荷を軽減し、持続可能な社会貢献が実現されます。
用語例の解説
- 環境側面: IT製品やインフラストラクチャの利用において地球環境に配慮した取り組み。
- グリーン IT: 環境負荷を最小限に抑えるための技術や運用手法。