雨宮勇徒の研究室教育問題

学力低下をどうするか

 数年前(1999年)の大学教授の調査で大学生の算数がしっかりと身に付いていないこと が判りました。しっかりと学力が定着していないままになっているということが わかります。[新版 分数ができない大学生 (ちくま文庫) ]

また、平成15年度に文部科学省によって実施された学校教育に関する意識調査 の一つに学校の授業の理解度がありました。

「よくわかる」「だいたいわかる」と答えた割合は、小学生全体で69.6%、中学2年で 61.8%、高校1年で32.3%でした。以前から言われている、小学生で3割、 中学生で5割、高校生で7割の生徒が授業についていけないという事と類似している 結果がでています。

生徒の学習到達度調査(PISA) 平成12年(2000年)調査 (OECD(経済協力開発機構)実施)では、宿題や自分の勉強をする時間が 27カ国中、最下位でした。学校教育に関する意識調査では、学校以外の一日の 勉強時間が「全く、ほとんどしていない」割合は、小学5年で7.2%、中学2年で 13.9%、高校1年では36.3%といった結果でした。

これらから、今の教育制度では学習内容がしっかりと身についていないまま 先に進んでいるのが大きな問題であると考えられます。その積み重ねが授業の 理解度にもあらわれているのだと思います。

教育内容をただ減らしたり増やしたりしただけでは、これらの問題は解決しない ようです。それはこれまで生徒の負担や理解度をあげるために授業内容を減らし 続けていたにもかかわらす、その問題が解決していないからです。

この問題を解決するには、ただ授業内容を変えるだけではなく、教育の仕方を 変えている必要があります。学校教育だけではなく、家庭での教育も重要です。

勉強量をただ増減しただけでは知識の定着度にあまり影響がないことは 述べました。それではどのような学習法がいいのか、科学的な見地から見てみ たいと思います。

まず年齢によって得意な記憶の仕方が違うというという事です。小さい頃は 単純な事柄の記憶力が発達しています。言葉や周りのもの覚えるといった、生活 に必要な情報を多く取り入れないといけないからです。この時期である小学生の 頃は九九や漢字などの丸暗記が得意な時期であるといえます。

中学を過ぎたあたりから、理屈で覚える記憶力が付いてきます。その反面、 丸暗記の能力は衰えてきます。理屈ぬきで覚えないといけない事柄は、小さい頃に 覚えるのが理にかなっているのです。

知識を定着するためには、いかに忘れないか・忘れにくくするかということを 考えなければなりません。

人間の頭に入った記憶は、20分で6割、1時間で5割、一日で3割程度しか残ら ないことがわかっています。また一度覚えた事を再び覚えなおすと、一度だけ覚え たときよりも忘れにくくなります。二回復習するよりも三回するほうが忘れにくく なります。このことは前に覚えた時から約一か月ぐらい効果があります。同じ事 を多く覚えようとすると、忘れやすくなることもわかっています。

これらのことから、勉強した後にできるだけ早く「復習」すること、復習は時間 をあけて何度かに分けてすること、勉強して一か月以内に確認のための「テスト」 をすること、一度に同じ勉強ばかりやらずに様々な勉強をすること、を日頃の学習に 取り入れると知識の定着率は格段にあがることでしょう。[記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス) ]

学力をあげるためには、勉強をしなければなりません。学校教育を考える上で 何を教えるかどのくらいの量を教えるかということは議論され、実際の学校教育 も変わっていきますが、勉強の仕方というものはあまり議論の対象になっていない のではないでしょうか。

また今の勉強の目的は、学校のテストのため受験のための勉強であって、将来 まで身に付いている学力のためかというと、疑問が残ります。テストのためだけの 一時的な知識をつけるだけで、将来まで残っている知識である保証もありません。

そのためには、覚えるだけの勉強ではなく、忘れにくくする勉強が必要です。 前回説明した記憶のメカニズムに則した学習方法をとるべきです。そうすれば、 長期的はもとより、短期的なテスト向けの勉強にも効果が上がるはずです。

あとは、勉強の仕方を早いうちから身に付けさせる必要があります。学校教育 では、勉強を教えても勉強の仕方を教えてはあまりしてくれません。宿題という 形で学ばせるとしても不十分な面が多いです。

勉強の仕方がわからなければ、いくら長い時間勉強しても、あまり効果的では ありません。勉強で得た知識自体は、ほかの分野では役に立ちませんが、勉強の 仕方は応用が利きます。勉強の質を上げるためにも、勉強の仕方を学ばせることは 不可欠といえます。

勉強をするのに必要なのは、勉強の仕方を身に付ける事のほかに集中力を上げる 事です。

きれやすい・落ち着きがない子供が増えてきている今、集中力を付けさせるのは 必要不可欠でしょう。集中力がなければ、授業を聞くにも家で勉強をするにしても 支障が出てきます。

集中力がないという要因の一つに、家庭での教育に問題があると考えられます。 様々な食べ物が手に入るようになり食が多様化した反面、ビタミン・ミネラル・ 食物繊維の不足という問題が出てきました。特にカルシウムが不足すると神経系統 に支障をきたし、きれやすくなるといわれています。

小さい頃の間違った躾によって、やる気がない、我慢ができない子供になる可能性 があります。そのことは論文の部屋の教育改造論でも書いています。参考にしてみてください。

一つのことに長時間集中させられる事が勉強の不出来、学力にも影響を与えると 考えられます。それはテレビゲームでも漫画でもいいと思います。その集中力を勉強に 向けさえすればいいのです。勉強に興味を持たすことができれば、その集中力が 生きてくるのです。

まずは短時間でもいいので、集中して勉強に当たらせるようにしましょう。 百ます計算などの単純計算や漢字の書き取り、本の音読などが脳の活性も期待でき 効果的だと思います。

今度は生活習慣と学力との間に密接な関係があることのデータを示していきます。 陰山英男著『学力の新しいルール 』からの引用です。

一つは睡眠時間とテストの点数の関係です。小学5年生を対象にしたものです。 睡眠時間が増えると8時間をピークにテストの点数が上がっている結果が出ています。 8時間を越えると逆に点数が下がっています。睡眠時間が4時間と8時間の子の 点数は20点もの差が生じているのです。

次は一食あたりの摂取食品数と5教科学力テスト偏差値の関係です。これは 中学生を対象にしたものです。一食あたりの摂取食品数が4未満の子は偏差値平均50 以下で、数が増えるごとに偏差値が上がり、12以上の子の偏差値は平均で60以上でした。  適切な生活習慣をさせることがいかに重要かわかるはずです。子供の人格形成 だけではなく、学力にも大きな影響を与えているからです。

適切な生活習慣をさせることがいかに重要かわかるはずです。子供の人格形成 だけではなく、学力にも大きな影響を与えているからです。  学力低下の一因に、テレビ・テレビゲーム・子供の夜型化などが影響していると 陰山氏は述べられています。

注:あくまで相関関係があるだけで、必ずしも因果関係があるわけではありません。

これからはインターネットや携帯電話の普及により生活習慣の荒れが深刻になると 予想されます。このままでは子供たちの学力はますます悪化していくことでしょう。

生活が便利になった反面、子供たちの教育には悪影響を与えています。規則正しい 生活を子供たちに身に付けさせること、子供たちとテレビやゲームなどの娯楽との 接し方を考えることは、現代での教育の重要課題と言えるでしょう。

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