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核燃料


原子力発電所、ここでは軽水炉で用いられる核燃料について説明していきます。

ウラン鉱石からウラン燃料を作る工程は、製錬、転換、濃縮、再転換、成型加工の順で行われます。

製錬はウラン鉱石からウラン燃料を取り出す工程です。掘り出した鉱石には、多いもので1%以上のウランが含まれています。この鉱石を酸やアルカリで溶かし、ウランを取り出します。これを粉末状にしたものをウラン精鉱、イエローケーキと呼ばれ、ウランの酸化物(八酸化三ウラン)を70%程度含んでいます。

転換はイエローケーキを六フッ化ウランにする工程です。これは次の濃縮過程のために気化しやすいウランにする必要があるからです。この工程はイエローケーキを硝酸に溶かし硝酸ウラニルにした後、溶媒抽出法で二酸化ウランに精製し、フッ化水素と反応させて六フッ化ウランにするのです。

濃縮はウラン235の濃度を高くする工程です。0.7%から3%ほどに濃縮させます。現在では遠心分離法が主流です。気化させた六フッ化ウランを遠心分離器にかけると、比重がわずかに重いウラン238が外側にいきやすくなります。すると中心にはウラン235の濃度が濃い六フッ化ウランが集まることになります。この過程を繰り返し、必要な濃度、軽水炉であれば3%までに濃縮します。

再転換は六フッ化ウランを二酸化ウランにする工程です。濃縮した六フッ化ウランを燃料として使う二酸化ウランにするのです。

成型加工は二酸化ウランを焼き固めペレットにする工程です。ペレットは小さな円柱形をしていて、それを300個程度並べてジルコニウム合金の被覆管に密閉したものを燃料棒といいます。

この燃料棒を数十本束ねたものが燃料集合体といい、これが原子力発電所で使用されています。

核燃料は原子炉で約三年間燃やされ、新しいものと交換されます。これは燃料となるウラン235が減少するのと、核分裂生成物の中に中性子を吸収しやすいものがあるからです。

使用済みの燃料には、ウラン235が約1%、プルトニウム239が約1%、ウラン235やプルトニウム239が核分裂してできた核分裂生成物が約3%、残り95%にウラン238が含まれています。原子炉の中では燃料全体の2%がウラン238からプルトニウム239に転換されます。つまり、ウラン235の3%中2%、生成されたプルトニウム239の2%中1%がエネルギーとして発電に利用されることになります。

まだ燃料として使えるウラン235とプルトニウム239が1%ずつ残っているので、これを取り出す再処理を行います。

まず原子力発電所や再処理工場で1〜4年程度、水を張ったプールで冷却させます。主に核分裂生成物や崩壊による放射線の量を減らし、再処理の作業をしやすくするのが目的です。

冷却した燃料棒を小さく切り刻み、硝酸に溶かします。すると被覆管に使われていた合金が解け残ります。

その後、共除染という工程でウラン・プルトニウムと核分裂生成物を分けます。核分裂生成物は高レベル廃棄物をして処理されます。

ウランとプルトニウムは分配という工程で分けられます。その後精製、脱硝作業を経て、核燃料として使われる日を待ちます。プルトニウムは一度分けられたウランと1:1の割合で混合されます。この段階のウランはウラン235が天然ウランより多い1%含まれ、減損ウランと呼ばれています。主に軽水炉の燃料として使われます。ちなみに濃縮作業で発生するウラン235の濃度が低いものを劣化ウランと呼ばれます。

高レベル廃棄物は扱いやすいようにガラスに溶かし込みガラス固化体にして、ステンレスの容器に密閉します。この状態は放射線を多くだし、約280度ほどまで発熱します。これを140度程度になるまで30〜50年間地上で空冷し、数百メートルの深さに保管されます。

参考文献

参考リンク

ウィキペディア
原子力百科事典 ATOMICA

(2011/6/7)

核についての基礎知識/ 原子力発電/ 放射線と原子/ 放射線と人体/ 核被害/ 体外・体内被曝

危機管理[南海トラフ地震対策・原子力]

雨宮勇徒の研究室[教育・南海トラフ地震対策・原子力]