雨宮勇徒の研究室危機管理[南海トラフ地震対策・原子力]

放射線と原子


ウランやプルトニウムなどの放射性物質からは放射線が発生します。核分裂の際に放射される中性子線がその一例です。

放射性物質からは核分裂のときだけではなく、崩壊の際にも放射線が出ます。これから放射性崩壊について説明します。

崩壊は原子核が放射線を出す現象のことをいいます。核分裂は外から中性子が原子核に当たることによって(一部は自発的に)引き起こされ、二つ(以上)の原子に分裂する際に中性子線が発生します。崩壊の場合には外的要因とは関係なく、放射性核種ごとで崩壊の仕方が変わってきます。また核分裂で二つに分かれる核種は一定ではなく、分裂するごとにまちまちになります。崩壊のときは原子核の変化は一定です。同じ放射性核種であれば発生する放射線の種類も原子核の変化も一緒になります。

崩壊には三つの種類があります。α崩壊、β崩壊、γ崩壊です。

α崩壊ではα線が放射されます。α線はヘリウム原子核(陽子2中性子2)の高速の流れです。放射性核種の原子核は崩壊以前よりヘリウム原子核分、原子番号2質量数4減少します。

β崩壊ではβ線とニュートリノが放射されます。β線は電子の高速の流れです。ニュートリノは質量が限り無く0に近い中性粒子です。β崩壊には、原子核中の中性子が陽子に転換し陰電子(マイナスの電荷をもった電子)を放出するマイナスβ崩壊、陽子が中性子に転換し陽電子(プラスの電荷をもった電子)を放出するプラスβ崩壊、電子が陽子と反応して中性子に変わり電磁波(固有X線)を放出する軌道電子捕獲の三種類があります。マイナスβ崩壊は原子番号が1増え、プラスβ崩壊と軌道電子捕獲は原子番号が1減ります。

γ崩壊ではγ線が放出されます。γ線は波長がきわめて短い電磁波です。γ崩壊ではエネルギーの小さい励起状態あるいは基底状態に遷移し、質量数や原子番号は変わりません。

基底状態とはエネルギーが最小の原子の状態です。外から放射線のようなエネルギーを受け取ると、原子のエネルギーが高くなります。この状態を励起状態といいます。励起され蓄えられた余分なエネルギーがγ線のような電磁波となって放出し、安定な基底状態となるのです。γ線は多くのα崩壊やβ崩壊のときにも放出されます。

放射性物質は不安定で、崩壊によって安定な核種へと変化していきます。放射性核種ごとにこの崩壊の頻度は異なります。原子がどの瞬間に崩壊するかはわかりませんが、核種ごと一定の割合で減少していくことはわかっています。

崩壊の頻度を表す指標として半減期があります。半減期とは放射性核種の量のが半分になる期間のことです。

次に半減期と崩壊の種類を挙げておきます。ウラン238:44億6800万年(α崩壊)。ウラン235:7億380万年(α崩壊)。プルトニウム239:2万4100年(α崩壊)。セシウム137:30年(β崩壊)。ヨウ素131:8日(β崩壊)。ストロンチウム90:28年(β崩壊)。

プルトニウム239が自然界に存在しないのは、半減期が地球の年齢に比べて短すぎるからです。その半面ウランは半減期が長いため現在まですべてが崩壊せずに残っていることになります。地球の誕生時点には存在していた(と思われる)ウラン以上の原子番号をもつ元素は半減期が短いためにほかの元素へと崩壊していったのです。

原子炉内の話を戻します。ウラン238に高速中性子が当たるとプルトニウム239になると原子力発電で書きました。これは厳密にいうと正しくありません。途中経過を説明します。

まずウラン238は高速中性子によってウラン239になるのです。239とは質量数のことなので、中性子が一つ増えたことになります。このウラン239の半減期は23分です。β崩壊し、ネプツニウム239になります。β崩壊によって中性子が陽子と電子に変わったのです。ネプツニウム239の半減期は2.4日で、β崩壊し、プルトニウム239となります。この期間が原子炉の運転期間3年に比べて短いので、ウラン238に高速中性子が当たりプルトニウム239になると表現しているのです。

核分裂生成物や原子炉で生成される超ウラン核種(ウラン以上の原子量を持つ核種)の崩壊過程の例を挙げます。
ヨウ素131→キセノン131(安定)
ヨウ素135(7時間:β)→キセノン135(9時間:β)→セシウム135(230万年:β)→バリウム135(安定)
セシウム134(2年:β)→バリウム134(安定)
セシウム137→バリウム137(安定)
ストロンチウム90→イットリウム90(3日:β)→ジルコニウム90(安定)
プルトニウム241(14年:β)→アメリシウム241(432年:α)→ネプツニウム237(214万年:α)→……
プルトニウム242(37万年:α)→ウラン238→……

この核分裂生成物や超ウラン核種は高レベル廃棄物と呼ばれ、原子炉の安全性やプルトニウムと並んで原子力発電の大きな問題となっています。それは強い放射能を持つ核種や半減期が長い核種が廃棄物の中に含まれているからです。一か所に大量に保管すると臨界を引き起こしてしまうので小分けして隔離しておかなければなりません。長い半減期のため、数世代にも渡って危険な廃棄物を保管し続ける必要があるのです。

参考文献

参考リンク

ウィキペディア
原子力百科事典 ATOMICA
放射線と物質との相互作用

(2011/6/9)

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